トムラウシ山におけるドローン捜索活動報告
活動の概要
2025年8月17日から31日にかけて、北海道大雪山系トムラウシ山周辺にて行方不明者の捜索活動を実施しました。
今回の捜索は、行方不明になった登山者のご家族の依頼を受けて開始されたものです。
捜索には(一社)無人航空機災害時支援協力事業体 代表理事の山﨑英紀を中心に、mmガード社や協力メンバーが参加。
ドローンと最新の通信機器を活用し、広大かつ厳しい自然環境下での捜索に挑みました
捜索活動の流れ
8月17日:新得署員と合流し、現地調査と捜索体制の構築。悪天候のため飛行見送り。
8月18日:東大雪山荘周辺を調査。銀泉台で手動飛行による予備調査を実施。
8月19日:「STARLINK」を導入し通信環境を確保。林野庁への申請後、ヒグマセンターでテストフライトを行うも強風で断念。
8月20日〜22日:旭岳・黒岳エリアでの調査飛行を繰り返し実施。22日には地獄谷でドローン映像から人影を確認し、警察へ引き継ぎ
8月23日〜25日:警察が身柄を収容。その後も別人の可能性を踏まえ追加捜索を継続。
8月26日〜31日:天候不良に悩まされつつも、トムラウシ山短縮登山口や沼ノ原などから再三飛行を実施。最終日まで広域での捜索を続行

使用した主な機材
DJI Matrice 30T(防水・赤外線カメラ搭載)
DJI Matrice 4T(小型・赤外線カメラ搭載)
DJI Mavic 3
DJI Avata 2
DJI Air 2S
解析ソフト DroneView For Rescue(mmガード社開発)
衛星通信システム STARLINK
活動の様子









総括 〜活動から見えてきたこと〜
今回の捜索は、広大なエリアと天候の急変という大きな制約の中で行われました。
その中で浮かび上がった課題と学びは、今後の活動に活かせる大切な資産です。
・捜索範囲の広大さと難しさ
遭難場所を絞り込むことができず、登山を伴う広域捜索が必要となりました。
・機材とリソースの限界
所有機材だけでは不足があり、メンバーの協力による持ち寄りで補いました。
今後は、機材の標準化と拡充が重要になります。
・天候の壁
山岳の気象は予測が難しく、アプリの天気予報と実際の山の状況に大きな差がありました。
「現地でしかわからない」状況に即応する柔軟性が必要です。
・行政との連携の有効性
空港事務所や森林管理署など、関係機関の協力を得られたことは大きな前進でした。
・仲間の力
片道5時間かけて日帰りで参加する人もおり、約2週間にわたり多くのメンバーが交代で支援。
「一人では不可能な活動も、仲間が集えば可能になる」ことを実感しました。
・ドローン捜索の有効性の証明
行方不明者の発見には至らなかったものの、別の遭難者を発見につなげることができ、ドローンが有効な手段であることを実証しました
今後に向けて
今回の活動は「困難な状況においてもドローンが人命救助の可能性を広げる」ことを示しました。
私たちはこの経験を踏まえ、
- 機材と体制のさらなる整備
- 気象や環境に対応した新たな運用ノウハウの確立
- 行政・警察・地域との連携強化
これらを進め、災害対応や捜索活動においてより効果的な支援ができるよう努めてまいります。
ご協力ください
現在も行方不明者の情報提供をお待ちしております。
何か手がかりや落とし物を見つけた場合は、新得警察署までご連絡ください。
→ 新得警察署の電話番号 01566-4-0110(地域係)
ご家族は1日も早く発見される事を願い、情報を心よりお待ちしております。
皆様のご協力をお願いいたします。

